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プロコフィエフ 『ロミオとジュリエット』よりモンタギュー家とキャピュレット家

登録日時:2009-12-24 / 更新日時:2009-12-24
雑誌 "ショパン" 2005年3月号
21世紀に弾きたい曲 『コラム、教えるポイント』

もとはシェイクスの戯曲「ロメオとジュリエット」をセルゲイ プロコフィエフがボリショイ劇場からバレイ作品の委嘱を受け、書き上げたものです。その中から10曲選んで自ら初演したのが、ピアノのための10の小品Op,75なのです。
今回はその中の1曲(モンタギュー家とキャピュレット家)を取り上げましょう。
両家の争いを音に託して作曲されたことはイメージを思い浮べる材料として、頭に入れておく必要が有りそうです。まずかなり深刻な争いだということが音色の流れからキャッチするためには、それらをイメージした音だしが必要です。
イントロの左手オクターブからそれを感じて・・・右手の付点は16分音符からテヌートの付点8分音符に誘い込むように・・・これ(テヌートの付点八分音符)は、常に手首の力を抜きつつ指先でしっかり支え、やりきれない感情の内蔵された音形をキャッチしつつ、上がったり下がったりの付点の連続のフレージングをしっかり掴みつつ、大きくまとめましょう。
中間部のこよなく深い悲しみに沈みつつ、愁いを含んだ3拍子のシーンはジュリエットが婚約者のパリスと踊っている場面なのです。ロミオのことを思いつつ、深い悲しみの中で踊るジュリエットをイメージして、音だしをしましょう。
ピアノ(P,PP)の緊張感を感じて、行き詰るような悲しみを表現することが大切です。
64小節からは、右手は上声部は極めてレガートに・・。内声に旋律が出てきます。
バランスに気をつけつつ、遠近を考えてフレーズをまとめましょう。この中間部はプロコフィエフ独特の叙情的なところです。締めくくりはあたかも気持ちを吹っ切るかのように・・ダイナミックに決めましょう。

バダジェフスカ 乙女の祈り

登録日時:2009-12-24 / 更新日時:2009-12-24
雑誌 "ショパン" 2005年2月号
21世紀に弾きたい曲 『コラム、教えるポイント』

これを作曲したバダジェフスカは27歳でこの世を去った。(23歳という説もある)ポーランドの女流作曲家で、この曲は18歳の時の作品とのこと。大変わかりやすく、トニカ、 ドミナンテ 、サブドミナントの和音(主要3和音)のみで出来た単純明快な曲だということもあり、当時の音楽雑誌の付録に掲載され、瞬く間に世界に広がったとのこと。
イントロはこの曲の”ことの始まり”をオクターブの付点でで高らかに知らせる。
手首を楽にオクターブの付点の連なりを、リズムが甘くならないように、大きくまとめつつ、テーマへ誘い込むように弾きましょう。テーマは1度の展開音を分散させつつ、あたかも尋ねるような音形を辿って4度に移行する。次に5度の分散音をあらたに転回させつつやはり尋ねるがごとく1度に・・・。
これを2回ほど繰り返し、最後はトリルで締めくくっている。実に解りやすく、聴いていて次は何処へ移行するか・・つまり定例の和音進行(カデンツ)をそのまま拡大したような音楽と言えましょう。このテーマを素に和音の分散をさらに細かくしたり、単旋律にしたり、トリルと分散音を組み合わせたりしつつ、最後はオクターブでフレーズをまとめて締めくくっていますが、それぞれのハーモニー(1度はことの始まりを感じて・・最後に来る1度は落ち着くさまを音色に・・・。4度は物事の広がり(展開する)さまを感じて・・・音色にしましょう。
5度は押し寄せる感じ・・或いはぐいぐい押していく様)を感じて・・音色に表出することが大切になります。
 つまりこの曲はハーモニーの音色感をキャッチしたり、表出したりすることがとても重要で、この音形の流れから、言葉のイメージを探りつつ音楽にすることも、一つの方法とも言えそうです。つまり誰でも料理できる曲の一つで、そのイメージの表出の仕方が大切なのです。何も感ずることなく弾くのと、イメージを色濃く表出しつつ演奏するのとでは、かなり変わる恐れのある
作品かもしれません。
大変わかりやすく、しかも自然な流れの定型で出来ていることもあり、演奏する際もこの自然さを最優先しつつ、ハーモニーの音色感を表出することが何より大切になりましょう。

バッハ(ブゾーニ編曲) シャコンヌ

登録日時:2009-12-24 / 更新日時:2009-12-24
雑誌 "ショパン" 2004年10月号
21世紀に弾きたい曲 『コラム、教えるポイント』

この曲は、もともと無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番の終曲として書かれています。イタリアの作曲家でピアニストのフェルッチョ・ブゾーニが ピアノ独奏用に編曲され、現在まで多くの愛好家の心を捉えている作品といえましょう。
 シャコンヌは3拍子で4小節、8小節単位でまとまっており、それは荘厳なリズムの流れの中での和音進行と共に、一定の低音を繰り返しながら変奏して行きますから、それらをしっかりと頭に置いた上で30にも及ぶ変奏をこなすことになります。
 まずは出だし・・独特の付点のリズムをその付点の音の後の音から常に次の音に誘い込むように・・・手首を起こしつつ行方を追う事から始まります。そしてこのテーマを基に少しづつ変奏していきます。Piu f やsubito P などの音色の変化はこの曲のイメージを色濃く表現する上でとても大切になります。
とにかく左手などのテーマを柱にポリホニックに、色々な音形(テーマを基にあたかもリズム遊びをしているような細かいリズムの動き)が出てきたり、その分散和音、オクターブ、カデンツ、音形の受け渡しなどが次々現れます。これらのテクニックは滞ることなく演奏するには、それぞれのテクに対応するべく、コントロール出来る指ほぐしを徹底させなければいけません。大切な事は全部の音を当分に響かせるだけでは音楽になりませんし、弾ききることも大変になりますので、テーマを支えにその柱を常に掴んで、それをほかとのバランスを取りつつ、楽に弾くところを造りつつ(手首、肘に力が入らないように)ダイナミックに 音楽にすることが大切なのです。
  つまりこれらのテーマの音形を基にドラマが展開していくわけですが、それぞれを大きく一まとめに勢いを常に感じつつ・・・あたかもいろいろな 人間模様を音に託して
いるようにも思われます。激しくドラマを展開させたかと思うと、 急にこの上ない静寂が訪れたり・・・。その辺のドラマも音で上手くキャッチするこ とが大切になります。
 何よりもこれらの諸々の展開を音で表出するべく・・音楽の伴った技術の制覇が必要でしょう。それぞれの変奏をイメージしつつ、きちんとした厳格なテンポを守って・・・最後は
このドラマの変奏の終結にふさわしく、堂々と荘厳さを失うこと なくまとめましょう。

ベートーヴェン ピアノソナタ15番 Op.28 『田園』

登録日時:2009-12-24 / 更新日時:2009-12-24
雑誌 "ショパン" 2004年3月号
21世紀に弾きたい曲 『コラム、教えるポイント』


この曲はベートーヴェン31歳の時の曲で、全体を覆っているのは、平和でのどかな牧歌的なイメージです。ベートーヴェンが付けたのではないと言われるこのタイトル”田園”ですが雰囲気はぴったり。
一楽章はアレグロでソナタ形式・・牧歌的イメージは大切ですが、どこかに憂いを含んだ音色を、左手イントロのD音の連打から表出することが大切に。
これをむき出しの音で並べたように弾かないこと!右手はフレーズのメロディーラインを指使いに気を付けつつ、レガートに表出しましょう。77小節目の内声で3度の分散音をこなしつつ、上下外側がラインになっている部分は何回も移調しつつ表れるが、こよなく美しい部分!バランスに気をつけつつベートーヴェン独特の転調の美しさを音色に託して、思う存分表出しましょう。
展開部からは八分音符の動きが左から右へと受け渡されるところはもちろんこの音階のうごきのフレーズを大きく掴みつつ、色分けすることが大切です。ここは対旋律が重要な要素を担っていることは言うまでもありません。
コーダの締めくくりは遠くへ・・・あっけないようでいて、意味深く。

2楽章、アンダンテは左手のオクターブの分散音・・根音を色分けしつつ、安定したテンポで・・・右手のメロディーラインをしっかり支えましょう。この3部形式の中間部は付点のリズムをポイントにそれぞれイメージを持たせつつ、リズム表現に味わいを・・・!後半の32分音符の動きは左手がテンポを支えつつ、幹のメロディーラインを上手く活かして、音楽の行方を大きくまとめる事が大切。

3楽章、スケルツオは全体に浮かれて弾んだ気分をイメージしつつ・・。
安定したテンポの中で、スイングのリズム表現が必要です。Trioは同じテーマ(問いと答え)を何回も奏しますが、左手のオクターブの分散(行方を追いつつ)色分けすることが大切に!

4楽章、ロンドのテーマは(オルゲルプンクト)に支えられて・・・(この左手、手首柔軟に、小指は少し支え、8分音符の音の行方を活かしつつ・・親指は指先で斜めに立てて)右手、田園ののどかさを表出(牧笛を連想)しましょう。
リズムに乗って表出することが大切に(内声にも注意を)!次の経過的な16分音符アルペジョはレガートに・・(手首を柔軟に左手根音をラインに)・・、音楽の行方を追いましょう!
エピソード(79小節目)からは付点四分音符を軸にしつつ、8分音符の行方をレガートに・・・だんだん近寄ってくる感じを大きく掴み、まとめると良いでしょう。
最後のコーダ(Piy Allegro quasi presto)はオルゲルプンクトを支えに、右手16分音符は高い音をラインにしつつ音楽にして・・
終わりはきっぱりと締めくくりましょう。

ショパン 幻想即興曲

登録日時:2009-12-24 / 更新日時:2009-12-24
雑誌 "ショパン" 2004年9月号
21世紀に弾きたい曲 『コラム、教えるポイント』

1834年(24歳)頃、作曲された小曲で、ショパンの死後フォンタナによって出版されたとのこと。その理由など色々取りざたされているものの、とにかくピアノを習っている過程で、この曲が弾けるようになることは、大きな夢であるはず・・!
まず・・出だし・・Allegro agitato 2/2拍子だということを脳裏に おいて・・・あたかもこれから起こる出来事を予感させるようなイメージを持ちつつ・・・が、大切に。
属調Gisの全音符と3小節目?度Cisに移行する音色感を活かすことから始まります。このイントロ(3連音符2拍分)を左手Chisに少し支えを入れて、手首を柔軟に円を描くように、一息に勢いを感じてこの幻想の世界を誘い出します。
左右6対8のリズムの動きを自然に融合させつつ、右手の細かい流れを決して暴れることなく、音の方向を(行方)を音色に生かして・・・この曲は全体にバランスには極力気をつけてまとめる必要があります。
左手、伴奏の分散音の根音には支えを入れつつ、常に音楽(ハーモニー)の音色感を活かすことが大切になります。中間部に入る前の左手オクターブの動きは、ダイナミックに・・・中間部に誘い込んで・・・。このフレーズ・・ffということで、押し付けて音を並べたように弾くことは厳禁・・
・。指使いは”1、5” ”1、4” を使い分けつつ、手首を柔軟にして音の行方を追いましょう。
中間部(Largo)はこよなく美しい幻想の世界・・ピアノを弾く幸せを感じる部分ですね!やはり左手イントロ部分は2小節一息に・・・。
メロディーラインは極めてレガートに弾く必要があります。
同じようなフレーズが何回も現れますが、それぞれ少しづつ音色に変化を持たせることが大切になります。もちろんバランスには極力気をつけて・・・。
 コーダは、左手で中間部のテーマを・・・PPになっていますが、かなり響きが必要です。PPは右手と考えましょう・・もちろん暴れることなくコントロールされた音色を表出する必要があります。最後はあたかも水底に沈むがごとくに・・・・この曲は技術的なことなど、ご自分の手にあった練習法を編み出し
つつ・・・根気よく・・・練習しましょう!
そしてピアノを弾く幸せを・・・ピアノ人生の過程で味わいましょう!