金子勝子オフィシャルサイト|音の調べ
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日本人と日本の伝統文化
登録日時:2009-12-24 / 更新日時:2009-12-24
雑誌 ”ムジカノーヴァ” 1993年
つれづれぐさ
{東京ディズニーランドに行ってみて}前から一度行ってみたいと思っていた”東京ディズニーランド”に
遅ればせながらやっと行く機会を持ったのですが・・・。 ところでこのディズニーランドは、てっきり子供の遊び場所と思っていた私は、行ってみてびっくり仰天!その種類の豊富さと、質の高さには、目を見張る思いが致しました。ただ入り口で待たされ、食事で待たされ、乗り物で待たされるのには閉口いたしましたが、逆に考えればそれだけ人気があるということになるのでしょうか・・・・。さて、行ったことのある人ならばお分かりでしょう!{若い人たちの喜ぶ乗り物}若い人たちはスターツアーズ(映像で宇宙の旅?大スペクタル風のパノラマで宇宙の障害物が次々に現れ迫ってくる?そのたびに座っている椅子が、ガタガタと大揺れに揺れるので、まるで実際に現場にいるような錯覚に襲われる)とか、スペースマウンテン(ジェットコースターで、部屋一杯銀河になっている中を猛スピードで走り回る)など大変な人気のようですが、私などこれらの乗り物は、身の縮むような思いで心臓に悪く、もう勘弁願いたいという心地でした。
{私の印象に残った物}
私が一番印象的だったのは、フォンテッドマンション(幽霊屋敷)で、日本のお化け屋敷はかって行ったことがあるが、その感覚で入場したところ、大違い!全てが大変精密に出来ていて、暗闇の中をゆっくりと乗り物が進んでいくのですが、その途中、、科学の粋を生かした諸々のお化けは、まず光線を操って、舞踏会の人々が現れたり消えたり・・、なるほど、幽霊そのものです。そしてさらに進んでいくと、ロボットの蝋人形が色々な動き?人間のしぐさ、動作をそのまま活かつつ、それに録音された会話
が人間の動作と上手くかみ合い、一瞬、人間がざわめきながら、うごめいている感じで、思わずたじろいでしまいます?それが海賊だったり、人間の地獄図だったりするのですが、実に精巧に出来ていてすっかり堪能しました。アメリカの幽霊とはこんな感じなのかと実感できた次第です。日本の幽霊とはかなり違うのは、やはり歴史、文化の違い、そして国民性の違いなのでしょう。どこかユーモアを感じ、怖さの中にも日本の幽霊の様にしっとりとした怖さはまるでなく、賑やかで、陰の感じがしないのです。
{日本の伝統音楽はどこへ?}
このことは音楽などにも現れているといえるでしょう。土壌、土着とは本当に凄いもので、長年の歴史の積み重ねの中で培われるものが、それぞれ全てに影響を与えるもののようです。 日本のそれは平家物語を琵琶の伴奏で語るもので象徴されるように、どこか悲惨さ、悲愴感が漂っている物が好まれ、流行するようです。(14世紀ごろ日本で大流行し、現在でもこの物語は、琵琶の代表的な音楽として奏でられている)そしてこの話(耳なし芳一)は幽霊の出てくる話として、よく夏になると語られ、映画などにもなっていることは、ある程度の年齢のお方ならご存知でしょう。しかし最近この”耳なし芳一”の話をあまり聴かなくなったのは、どういうわけなのでしょう。現代的でないということなのでしょうか。最近の日本の特徴としてとても気にかかることがあります。大袈裟に考えると、現在、日本は世界中から色々なものが種々雑多に入り込んで、ごちゃ混ぜ文化になり、日本古来の伝統文化が一部を除いて段々隅っこに追いやられ、消されつつあるように思うのは私だけでしょうか・・・。 この耳なし芳一の話も、外国人である小泉八雲が翻訳し、広めたことを見てもわるように、日本人は日本の伝統文化という財産をどうも軽んじる傾向にあるように思われます。このことをこれからを担う若者に早く感じさせ、何とか処置を探る必要があるのではと感じるのは、私の老婆心だけでしょうか・・・。洋楽に携わっている身でありながらも、日本人として、ふと思われることでした。
リスト 愛の夢
登録日時:2009-12-24 / 更新日時:2009-12-24
雑誌 "ショパン" H15/12/4
21世紀に弾きたい曲 『コラム、教えるポイント』
このリストの(3つのノクターン)第3番”愛の夢”はフライリヒラート(ドイツのロマン派詩人)の詩(おお愛せよ!愛しうる限り、愛しなさい)に、魅了されたリストが、始め1845年歌曲として作曲し、後にピアノソロ用に編曲されたもの。 アルペジオの間を縫うように、内声に流れる、この極めて甘い愛の歌のメロディーラインを・・・くっきりと歌い上げ、表出するためにも、伴奏部分のアルペジオは極力バランスに気をつけることは、言うまでも無いこと・・・。このアルペジオとメロデーラインとの遠近感を伴ったコントロールが、命と言ってよいでしょう! アルペジオはペダルに注意しましょう。バス音がよくハモルためにも、ペダルに入ることが大切です。
カデンツは大きく一つにまとめましょう・・・。Hduurからどんどん気持ちが高揚・・・興奮の極地に・・・・。 オクターブとそれを縫う八分音符の音形は、それぞれ分離したようにならずに、大きくフレーズをまとめましょう!キーポイントは肩を楽に移動を早く・・・。しっかりとコントロールしつつ、フレーズの行方を良くキャッチして、ダイナミックに、こなすことが大切!そしてカデンツをはさんで・・・・思い出のかなたへ・・・・。 最後の部分は神にあたかも許しを請うがごとくに・・・神にささげる祈りを・・・。 この甘い歌”愛の歌をそれぞれご自分のイメージを膨らませて・・・堪能しましょう。
メンデルスゾーン ロンドカプリチオーソ 作品14
登録日時:2009-12-24 / 更新日時:2009-12-24
雑誌 "ショパン" H15/10/12
21世紀に弾きたい曲 『コラム、教えるポイント』
甘美で優雅な序奏とロンド(軽快な主要部分とそれをめぐる2つのエピソードを軸にA,B,A,C,B,A)から成るこの曲は、驚いたことにメンデルスゾーンが15歳の時に作曲されたとの事!! この序奏部分は左手のオクターブの流れの上を静かな和音が素敵的な世界へ誘い込んでくれます。PPの緊張感の中、左手の軸を支えに(このオクターブはもちろん行方を追って音楽に)右手上声部の旋律は色鮮やかにバランスには極力気をつけつつ、甘美に表出しましょう。オクターブの流れは常に音の行方を感じること。(ffですが、押し付けて並べて弾くようなことのないように)この序奏部分は大きく1つに・・・この後に起こる出来事としてのロンドの部分を思い切り想像力を駆使してドラマティックにまとめましょう・・・。 Presto(ロンド)は軽快に・・・。出だしはアウフタクトにっていますが、ここは小節の頭に誘い込んで弾くことと共に、スラー(アーティキレーション)を観ると、リズム表現として頭に軽く支えも欲しいところ・・・。両方を上手くかみ合わせた表現を・・・!!右手三度の連続は4、1と3、2の指使いで・・。置き換え練習で、まず指先に音を集めつつ・・リズム練習などを工夫して根気良く練習しましょう。このような曲は隅々まで音をつかみつつ、リズムにメリハリをつけることが大切です。音が指に入りきれていない状態を決して許さないこと!!そしてしっかりと音をつかめるまでは、テンポを上げることは厳禁です。特に16部音符の細かい動きは乱雑にならないためにも、ゆっくりと音楽的に行方が捉えられるまで、リズム練習はもちろんのこと、置き換え練習もしてみてください。意外と効果的ですよ。又左手はベース音から和音に移る音形が多いのですが、ベース音からの行方を感じつつ、バランスに気をつけて表出しましょう。左手八分音符、右手十六分の交互のオクターブの早い表出は、あくまでも左手が主導・・!!特に最後の部分はフィナーレ!フレーズのメリハリをしっかりと掴みつつ、勢いをつけて・・・大くダイナミックに!!この部分はこの曲の特長にもなっています。指神経を思い切りよく駆使しましょう!
ブラームス 3つの間奏曲 作品117
登録日時:2009-12-24 / 更新日時:2009-12-24
雑誌 "ショパン" 2003年
21世紀に弾きたい曲 『コラム、教えるポイント』
この3つのインテルメッォは、ブラームス自身が(我が心の痛みへの子守唄)と呼んでいたといわれているように、1曲目は晩年のブラームスの心情を表すかのような、心の安定と共にわびしさも漂わせています。
それがオクターブ、重音の音形の流れの中にメロディーラインとして表現されていますから、バランスに極力気をつけつつ、手首を楽にして行方を緊張感のある音色で浮き立たせ、フレーズをまとめる必要があります。
ペダルは汚くならないように、タイミングに気をつけて。中間部の右手スタッカートは決して出過ぎないように。
2曲目はあたかも心の空虚さ、やりきれなさを音に託しているように思われます。
右手32分音符の2つの音にスラーの掛かったアウフタクトの音形が、メロディーラインになっています。それが呼びかけのようになっており、それぞれ音色をそれに合わせて変えることが大切になります。右手の合いの手のところは、右手に上手く融合させて、ブラームスの心情を捉えましょう。
3曲目は暗く沈んだ雰囲気を漂わせています。そのメロディーラインが1曲目と同じく、オクターブ、重音和音の流れの中に描き出されているので、バランスにはくれぐれも気をつけましょう。特にオクターブの音楽の行方には気をつけて。左手の行方にも十分注意を払いましょう。テンポはアンダンテが基準になっていますが、それに続く表示は少しづつ意味合いを変えています。ゆったりしたテンポの中で、ブラームスが諸々の心情を音に託して吐露していることは、決して忘れないように・・・。
ドビュッシー 『版画』より『雨の庭』
登録日時:2009-12-24 / 更新日時:2009-12-24
雑誌 "ショパン" 2004年6月号
21世紀に弾きたい曲 『コラム、教えるポイント』
ドビュッシー『版画』より雨の庭は1903年に作曲され、独特の書法を用いた作品のはしりとの事。フランスの童謡がテーマになっているようですが、内容はドビュッシーの繊細な感受性が思う存分駆使されたファンタジーの世界・・・。
出だしからシーンと静まり返った緊張感の中での幕開け・・・。にわか雨が・・・・左手のメロディーラインをPPの緊張感の流れの中で行方を追いつつ・・・フレーズを大きく捉えてまとめましょう。右手は合いの手のようになりますが、左手に上手く乗ってバランスに極力気をつける必要があります。27小節からはFis dur・・・チョット太陽がのぞきそうな気配を感じさせたかと思うまもなく、31小節あたりから、雲行き怪しく・・・37小節から左手の音形の柱が徐々に音を上げつつ、どしゃぶりの気配を・・・・47小節のffで・・・頂点・・急に雨がやんでいくかのように・・・急激な衰退・・・音色のコントロールの腕の見せ所・・・・。しかしこれで辺りが落ち着く(晴れる)わけではなく・・・56小節目から転調を重ねつつ・・・風の吹き荒れる様子も交えつつ一気にCis durへ・・・雨も落ち着き・・・ファンタジックな夢の世界(水滴に太陽の光が乱反射?)へ招いてくれます。75小節目は右手のメロディーラインに合わせて、左手3連符は決して暴れないように。(バランスに気をつけつつ)左手下の2分音符は浮き立たせて、音楽に・・・。100小節目から又雲行きが怪しく・・右手の5連と6連の階段を上がりつつの音形は親指が鍵に・・・デコボコしないよう斜めに立てて・・・、アルペジョの弾き方に極力気をつけましょう。
左手のオクターブも右手を支えて音楽に・・・。116小節からはあたかも雷が落ちたごとく・・・トリルは稲光なども連想しつつ・・・126小節からは右手は左手のトレモロに上手く乗って、テンポをしっかり掴むこと。133小節は右手に惑わされることなく、しっかりと左右合わせて音を掴みましょう!最後はこの曲全体の流れを凝縮して・・・しっかり音を掴みとって締めくくる必要があります。この雨の庭・・・イメージ(情景)を膨らませつつ弾くことことがなにより大切です。このことによってはじめてドビュッシー音楽の真髄に近づけると申せましょう。
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